April 27, 2008

【告知】『イタリアン・ホラーの密かな愉しみ』発売記念イタホラ祭り

 書店に並んでから早くも二ヶ月経ちましたが、僕も一部を寄稿させてもらった本邦初のイタリアン・ホラー専門書『イタリアン・ホラーの密かな愉しみ 血ぬられたハッタリの美学』が、現在好評発売中です。

『イタリアン・ホラーの密かな愉しみ 血ぬられたハッタリの美学』
編=山崎圭司
執筆者=山崎圭司、西村安弘、矢澤利弘、殿井君人、伊東美和、中原昌也、馬場敏裕
本体価格=2000円/フィルムアート社・刊
ISBNコード=978-4-8459-0816-5 C0074
A5判/並製/208ページ(うちカラー口絵8ページ) 

M・バーヴァ、D・アルジェント、L・フルチ
ゲテモノ上等!恐怖映画、一挙解凍
タランティーノやバートンが偏愛するB級ホラー映画のすべて!(帯の惹句より)

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contents
◎ポスター・ギャラリー
◎序文
◎まずはコレ!イタリアン・ホラー10選
01 吸血鬼
02 生血を吸う女
03 白い肌に狂う鞭
04 顔のない殺人鬼(執筆:殿井)
05 炎のいけにえ(執筆:殿井)
06 サスペリアPART2
07 サスペリア
08 サンゲリア
09 デモンズ
10 デモンズ95
◎SPECIAL INTERVIEW ダリオ・アルジェント
◎テーマで覗く、イタリアン・ホラーの恐ろしい秘密。
01 イタリアン・スプラッター小史
02 家庭内の権力闘争が怖い!
03 少数派(マイノリティ)が恐怖の源となる理由
04 女が一番、恐ろしい。
05 人肉食映画と植民地主義の関係
06 イタホラは漫画から生まれる
07 ゴシックホラーにみる性的抑圧
◎COLUMN イタホラは最後の秘境だ! 中原昌也
◎怪奇!猟奇!無敵のサブジャンル×6
01 ジャッロ
02 ゾンビ
03 吸血鬼
04 魔女
05 オカルト(執筆:殿井)
06 生物パニック(執筆:殿井)
◎COLUMN 怒涛のサウンドトラック対談! 中原昌也×馬場敏裕
◎Who's WHO? ハッタリのマエストロ10
01 リカルド・フレーダ
02 マリオ・バーヴァ
03 レナート・ポルセリ
04 ルチオ・フルチ
05 アントニオ・マルゲリーティ(執筆:殿井)
06 ジョー・ダマト
07 セルジオ・マルティーノ(執筆:殿井)
08 ルッジェロ・デオダート
09 ダリオ・アルジェント
10 ニケーレ・ソアヴィ
◎イタリアン・ホラー AtoZ

 版元さんからの要望は初心者が入りやすいイタリアホラー本とのことでしたので、どちらかと言えば広く浅くタイプの構成になってますが、そこはそれ、“「あ」ページ”の矢澤氏、“yellow”の山崎氏、“ゾンビ手帳”の伊東氏ら(僕以外は)その道の権威的な蒼々たる顔ぶれが筆をふるっておりますので、独自のディープな視点が楽しい1冊になってます。因みに僕は、偽『JAWS』映画とか、パチモン『エクソシスト』映画とか隙間狙いな部分を書かせてもらってます(笑)。

 そして、本書の発刊を記念したイタホラ・イベントを5月5日に、阿佐ヶ谷ロフトAにて開催します。やばい(ぬるい?-苦笑-)映像・トーク盛りだくさんな内容になるかと思いますので、イタホラと聞くとピピっと来るそこの貴方は、是非是非ご来場くださいませ。

「イタリアン・ホラーの密かな愉しみ~血ぬられたハッタリの美学」発売記念
「大流血!イタリアンホラー祭り」@阿佐ヶ谷ロフトA

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イタリアは残酷映画の宝庫だった!
5月5日阿佐ヶ谷が血の海に!!

【出演】『イタリアンホラーの密かな楽しみ』執筆者軍団2008
山崎圭司(映画ライター・本書編者)
矢澤利弘(ダリオ・アルジェント研究家)
伊東美和(ゾンビ映画ウォッチャー兼タコシェ店長)
殿井君人(ホラーライター)
他イタホラ本執筆者多数出演予定!
【司会】
多田遠志(イタホラ猛獣使い、ライター)

OPEN18:30/START19:30
¥1,000(飲食代別)<当日券のみ>

会場:阿佐ヶ谷ロフトA

 つうことで今日は1日イベント時の僕の受け持ち部分用に、スパゲッティ生物パニック映像を片っ端からHDDに取り込んでみましたよ。編集までは辿り着かなかったけど、一応未だ1週間あるからなんとかなるでしょう(多分)。

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July 15, 2007

『こわい童謡 表の章・裏の章』

『こわい童謡 表の章・裏の章』(東京テアトル:配給)

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 今週末までシネマート六本木にて公開中のパン・ブラザースの『リサイクル 死界』は、人気女流作家が自身の思い描いたホラー小説の世界が別世界として存在しその中へと取り込まれて行くという物語で、彼女の思いつき、想像、そして忘れ去った過去が現実化した異世界のイマジネーション溢れる描写が圧倒的なまでに魅力的であると同時に、特に日本では広く知られている一般信仰の変化形としても興味深かった。その一般信仰が、“言霊”(コトダマ)である。

 “言霊”は言葉にはそれ自体に霊的な力が宿っており、その言葉を発するという行為自体が霊力を発揮するという思想である。これは何も特別なことではなく、自分自身も含めおそらく無宗教である多くの日本人が、神や仏といった特定の信仰対象を持たなくとも、困った時などに漠然と“何か”にすがるかのように、希望を願ってしまうことそしてそれを何気なく言葉にしてしまうことと言ったありふれた日常の一幕からも垣間見ることができる。そんな言葉自体が持つ力を、童謡という道具立てを用いて描いた福谷修監督の最新作が、『こわい童謡 表の章・裏の章』だ。

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 タイトルからも判るように『こわい童謡』は現在公開中の“表の章”、7月28日より公開される“裏の章”という二本の長編作品からなり、勿論それぞれには単独作としても楽しめる趣向を凝らしつつ、その全体像はあくまで二本を見終わってからはじめて浮かび上がってくる仕掛けになっている。さらに“表の章”“裏の章”はそれぞれの作品が、童謡をモチーフとしたチャプター“かごめ かごめ”、“とおりゃんせ”、“はないちもんめ”、“ひらいた ひらいた”“ずいずいずっころばし”“ほたる こい”に分かれており、表の章で起きた惨劇と謎を、裏の章で検証して行くスタイルとなっている。

 舞台となるのは東京郊外にある全寮制の聖蘭女学院。転校生の彩音は、慣れない学園生活故か?奇妙な幻聴に悩まされながらも、所属する合唱部の練習に参加していた。聖蘭学院合唱部は、かつては全国大会で優勝したことがあり、顧問の女教師は当時の優勝時の音源による童謡のレコードを用い、厳しい指導を続けていた。ところがそんなある日、一人の女子部員が屋上から謎の転落死を遂げたことを皮切りに、女子部員達が次々と謎の失踪や不審な死を遂げていく。その死に様は、合唱部が大会用に練習していた童謡の歌詞をなぞったものだった。友人達を失いながら、彩音は一人で事件の謎に立ち向かって行くのだが…。

 “表の章”は、女子高生たちが次々と奇怪な死をとげていくという、ひじょうにオーソドックスな学園ホラーの形態をとっており、また本作の中では、事件は何の解決も見せぬまま終幕を迎える。おそらく勘の良い映画ファンなら、事件の真犯人が誰かは容易に想像がつくかとも思うが、“なぜ”この事件が起きたのかという部分でのヒントは最小限に抑えられておりその真相を看破しうる者は少ないだろう。だが往時のシリアル映画と同様のほぼ同時期公開という公開形態を考えれば、“裏の章”への期待を膨らませつつ、その謎に色々と思いをはせるももまた楽しいではないか。また、舞台となる学園の外観は、中盤まではほとんど画面に出さずに人里離れた閉鎖的な学園というある意味古典展的なシチュエーションを思わせるが、中盤で外観を見せて周囲がごく普通の市街地であることを認知させる演出は、ここでより身近さを感じさせる都市伝説に通じる感覚があり、これは福谷のこれまでの作品とも通じるものだ。

 また“表の章”で展開する惨劇の数々を、観客はヒロイン彩音の視点で体験することになる。それらの描写は、現役女子中・高生も劇場で見れるレベルでという製作サイドからの強い要望があったようで、極端なゴア描写は見受けられず、どこか幻想的な味わいの強いものになっている。それでも『四人の食卓』を想起させる落下し激突する直前の瞬間を延々と延ばしてみせる描写や、イタリアン・ホラーの名匠の遺作の有名な場面を福谷流にリスペクトを捧げたと思しきショック場面など、ジャンル・ファンなら思わずニヤリとさせられる描写が多数登場し、特に前述のショック場面は、全ての真相がわかってから思い起こすと、それ自体にもヒントが秘められていたことに気づかされる。全体的にはオーソドックスな恐怖演出だが、実は個人的にもドキッとした場面があったことはここだけの内緒だ(笑)。

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 ヒロインの彩音には、ホラー映画初主演となる若手実力派の多部美華子。これまでもシリアスな顔は度々見せてくれてくれたが、恐怖に追いつめられていく姿を健気に好演。実際、“裏の章”になると、ファンとしては痛々しい姿が見ていて辛いほどだが。この他、音楽部の部長末紀役に『エンマ』等の近野成美、ルームメイト沙世には福谷作品には前作『渋谷怪談 THE リアル都市伝説』に続いての出演となるしほの涼、と和製ホラークイーンは体験済みの少女たちによる、可憐で凄惨な姿も楽しい。

 一方“裏の章”は、聖蘭学院合唱部12人惨殺事件の5年後、事件により廃校となり誰もいないはずの学校から童謡が聴こえて来るという噂の調査にテレビ番組クルーが乗り込んでくるというもの。そして今回の物語のキーとなるのが、クルーに同行することになった音響分析官、響子の存在だ。

 “表の章”がヒロインが様々な怪異に見舞われて…というオーソドックスな学園ホラーだったのに対し、“裏の章”は日時の経過を画面にその都度提示しつつ、ドキュメンタリー・タッチで描いていくアプローチがとられている。ただドキュメンタリー・タッチと言っても、一時流行った『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』のように事態の生々しを優先させるフェイク・ドキュメンタリー・タッチではなく、怪異をあくまで真正面から科学で解明しようとする『ヘルハウス』タイプのアプローチがなされているのだ。響子は過去に起きた事件の記録音声や、その時々の奇怪な音響を、PCで解析していくことで冷静にしかし着実にノイズの中に隠れていた真実を見出そうとしていく。あまり一般的には知られていない、音響分析官の仕事ぶりも、その場面場面の音声や小道具にリアリティが感じられる。これは、実在の分析官への綿密な取材の賜物だろう(取材に応じた日本音響研究所の鈴木松美所長が、監修としても参加している)。

 こうして科学的なアプローチにより明らかにされていく真相とは、幽霊の正体みたり枯れ尾花なのか、それともやはり怪異は怪異なのか?もちろんその真相の実際ににここで触れるようなことはしないが、アプローチはあくまで科学的に、しかしエンターテイメントとしてのお楽しみは忘れずにというエンディングの匙加減は中々楽しいぞ。クライマックスで登場する、マイケル・T・ヤマグチによる造形物も厭な感じで魅せてくれる。

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 ヒロインの音響分析官、響子には、本作が映画初主演となる安めぐみ。僕は本作以外での彼女の活躍を寡聞にも知らなかったが、自身の感情をそれほどには見せずに、謎を追求していく姿はなかなか悪くない。テレビ番組のレポーター役は、やはり『渋谷怪談 THE リアル都市伝説』に続いての出演(でも、もう制服じゃないのね)の石坂ちなみ。津田寛治の番組プロデューサーも、いかにもいいかげんなノリを飄々と演じていて印象的。

 というわけで、学園ホラーであり、事件の顛末を幻想的にヒロインの主観から描いた“表の章”と、SFホラーとでも言うべき科学的なアプローチで怪異の謎に迫る“裏の章”は、やはり多少の時間をおいてであっても、二作品それぞれを見た上で作品世界全体を楽しむべきだ。“表の章”を見て、「これで終わり?」と不満に思った方も、その続きは3年間とか待たずとも、最長でも3週間後には見ることができるのだから。そして“裏の章”を見れば、ここに記したこと以外でも、様々な部分で対になっているに作品の構造を楽しめるのだから。“表”でやめてしまうということは、そのお楽しみの半分以下しか味わえないことに他ならないのだから。

 なお、監督・脚本の福谷は、これまでの作品でも試みてきたように、この2本の映画以外でも本作のメディア・ミックス企画を展開している。既に書店に並んでいる本作の福谷自身によるノベライズ版(竹書房文庫)では、映像化を憚られた部分が活字として復活しているとのこと。僕自身は未だこのノベライズを読めてはいないのだが、同様の位置づけにある『渋谷怪談 THE リアル都市伝説』(竹書房文庫)では、ゴア表現の過激さといった部分に留まらず、映像故の恐怖表現、そして活字故の恐怖表現をそれぞれに追求していたことを強く印象づけられたので、このノベライズも同様の愉しみを期待している。この他にも、書籍メディアでは本作公開前に雑誌に掲載された此本和津也によるコミック版(幻冬舎)があり、また昨年刊行された福谷の『子守り首』(幻冬舎文庫)も、本作に通じる“呪いの歌”をテーマにした都市伝説ホラーだ。

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 その他で、ぢつは個人的に愉しみにしているのが4Dアトラクションという、あの“ウィリアム・キャッスル”の流れを汲む体感型映像アトラクションとして作られる『こわい童謡 迫間(はざま)の章』だ。これは3D上映に、動くシート、エア、スモーク等の趣向を凝らした(でも同時に稚気溢れるギミックの数々による)ホラー体験が味わえるアトラクション用オリジナル・コンテンツだ。主演は合唱部の部長を演じた今野成美ということで、“表の章”のプロローグもしくは描かれなかったサイド・ストーリーとなるものと予想しているがさて?

 ところで冒頭に書いた“言霊”と本作の関連を、ほとんどここでは書かなかったのは、そのアプローチ等について書くことがネタバレに繋がり兼ねないからかもしれないので…ということで、ご理解いただきたい。それぞれの眼と耳をもって、劇場で御確認ください。

(2007年5月23日 午後3時半~ メディアボックス試写室にて)

☆【表の章】2007年7月7日よりテアトル新宿にてレイトロードショー公開中、以後全国順次公開!
都内では8月4日よりテアトルダイヤにてもレイトロードショー公開!
☆【裏の章】2007年7月28日よりテアトル新宿にてレイトロードショー、以後全国順次公開!
都内では8月18日よりテアトルダイヤにてもレイトロードショー公開!

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March 12, 2007

【告知】『ダリオ・アルジェント 恐怖の幾何学』

 日本国内では間違いなく最強…いや、世界的に見ても有数なダリオ・アルジェント・ファン・サイトと言える“ダリオ・アルジェント AVETE VISTO DARIO ARGENTO PAGE”を主催する“赤い魔女”こと矢澤利弘氏が、日本では初めてになるダリオ・アルジェントの研究読本を上梓。矢澤氏のサイト限定では、2月中旬より先行発売されていたが、3月より大手一般書店やインターネット書店等でも取り扱いが始まっている。

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ダリオ・アルジェント 恐怖の幾何学』矢澤利弘 著
 A5版336ページ 定価3800円(税込3990円) ABC出版

 アルジェントの歩みとその全作品に関してを、アルジェント本人や関係者の証言を盛り込みつつ詳述したもの。著者自身による作品解題的な要素は控え目となっているが(勿論、無いわけではない)、これは紙数の関係と日本で初の研究書という立場からあえて客観的な視点に拘ったから故で、そうした部分は第2弾以降で取り上げることを予定しているそうだ。詳しい内容は、AVETE VISTO内の詳細頁をどうぞ。なお、著者サイトで直接購入を申し込むと、500冊限定のシリアル番号カードがついてくる。発送等の対応も早いので、今現在(1ヵ月後とかに在庫があるかは判らないが)、確実に入手するには著者サイトを利用するのもいいだろう。希望者には署名も承るとのこと。

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◎サイト注文限定シリアルナンバー・カード

 また、この期に及んで今さら…なタイミングでの告知となるが(爆!)、明日13日(火)の宵にはLOFT/PLUS ONEにて、本書の出版記念イベントも開催される。

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★日本初!ダリオ・アルジェント研究読本発売記念イベント★
「ダリオ・アルジェント 恐怖の幾何学」

【日時】3月13日(火)Open/18:30 Start/19:30

【会場】LOFT/PLUS ONE
      
【出演】
矢澤利弘(「ダリオ・アルジェント 恐怖の幾何学」著者、アルジェント研究会代表)
篠崎誠(映画監督)
大久保智康(脚本家)
鷲巣義明(映画文筆家)
殿井君人(映画ライター)
多田遠志(司会・LOFT/PLUS ONE)

【料金】1500円(飲食別)

鮮血の悪夢をフイルムに刻み込むイタリアのホラー映画の鬼才監督ダリオ・アルジェント。ホラー映画はもとより、CM、ファッションショーなど、知られざる仕事にも肉迫。多彩なゲストによるトークと貴重な映像を交えて、アルジェントの魅力に迫ります。

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因みにイベントは、“ジャッロ”“知られざる仕事”“三人の魔女と怪奇ワールド”の三部構成で、トークの合間には国内ソフト未発売や既に廃盤となった作品などからのレア・クリップを含む映像も上映予定。初心者の方にも優しく、かつディープなものになると思われる。

ここでもこれまでに何度も公言しているとおりアルジェント嫌いの僕も、何故か(…会場を凍らせるため?)トークに参加します。石を投げたら駄目だよ>「あ」者の皆様。

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January 16, 2007

2006年のお気に入り映画

 皆様、明けましておめでとうございます。昨年はすっかりmixiの方にひきこり(苦笑)こちらはすっかりご無沙汰してしまいましたが、今年はもう少しだけこちらの更新頻度をあげていきたいと思いますので、どうぞ宜しくお付き合いくださいませ>ALL。

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…などと書きかけてウダウダしてたら、早くも1月の半分が終わっちゃいましたよ。相変わらずの有言不実行、困ったもんです。

 とりあえず今さらですが昨年の個人的なお気に入り作品を纏めてみました。なお該当作品は鑑賞ベースではなく、公開ベースで選んでます(故に実際には一昨年見たものもあれば、昨年見てよかったけど来年度に送ったものもあcccfffり)。並び順はお気に入り順とは無関係です。


◎2006年劇場公開部門 その1(ジャンル系)

・みえない雲

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・スネーク・フライト

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・ポセイドン

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 『みえない雲』は原発事故による放射能汚染の恐怖を、あくまで主人公の少女の視点=一般人からの視点で描くことを一貫させた秀作。確かに一般ドラマ的な部分の比重も大きく、派手なVFX効果もほとんど用いられていないが、放射能から逃れようと駅につめかけるレミング状態の群集を描いたモブシーンはまさに迫真だし、パニックの中で起きる悲劇の描き方にも容赦がない。だからこそ、どん底からの再生を描く最終パートも説得力を持つのだよ。リメイク版『日本沈没』のクリエイターには、これと『ありがとう』を見てパニック映画のなんたるかを勉強し直して来いといいたい。『スネーク・フライト』はB級魂そのままに、突っ込みどころ満載なプロット、中坊が考えそうな下ネタ系襲撃場面、そしてパニック映画定番の薄っぺらな人物配置を臆面もなく取り入れて、まんまとブロックバスター作品として仕上げてしまったしたたかさに脱帽。これは素直に、楽しい映画。オリジナルの持っていたドラマを潔く切り捨て、CGによる地獄絵巻を描くことだけに腐心した『ポセイドン』も、見世物としてはありだろう。劇場スクリーンがリモコン操作できないことが残念に感じるほど、細部まで描きこまれていた転覆場面は満腹感高し。この3本以外では、王道のモンパニ演出と、ちょっと斜めからとらえた物語部分のバランス感覚が楽しかった『グエムル 漢江の怪物』も落せない。

・ディセント

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・機械じかけの小児病棟

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・デビルズ・リジェクト

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 洋物ホラーは旧作等の日本での公開がたまたま重なったという側面もあるわけだけど、久々に大豊作。中でも英=『ディセント』、西=『機械じかけの小児病棟』、仏=『ハイテンション』、仏=加『サイレント・ヒル』とユーロ系に見るべき作品が揃っていた。中でも普通に面白い『ドッグ・ソルジャー』でデビューしたニール・マーシャルの第2作『ディセント』は、現実状況とキャラの内面状況それぞれの深い闇を活写した傑作。純粋なホラーとしては、テレフィーチャー『スパニッシュ・ホラー・プロジェクト 悪魔の管理人』の方に軍配をあげるが、現象面は兎も角として後味の悪くない『機械じかけの小児病棟』の結末には、ジャウム・パラゲロの新境地が感じられた。稚気溢れるホラーとしての側面では前作の方がストレートだったけど、『デビルズ・リジェクト』の地獄のニュー・シネマとしてのインパクトは最高。選外扱いとなったが『ホステル』のVシネ的なゴア描写と、『テキサス・チェンソー ビギニング』の素直なアメリカン・スラッシャーぶりも楽しかったぞ。

・トゥモロー・ワールド

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 SF・ファンタジー系では『スーパーマン リターンズ』『レディ・イン・ザ・ウォーター』『スキャナー・ダークリー』とワーナーブラザースの健闘ぶりが目立ったが、昨年を代表する1本を選ぶなら、70年代英国ディストピア作品群をより現代的に辛辣な状況下でリメイクしたかのようなテイストの『トゥモロー・ワールド』を推す。

・輪廻

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・パプリカ

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・時をかける少女

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 国産ホラーは観に行くたびに、ますます玉と石との開きが大きくなっていることを痛感させられるが、メジャーな土俵での『呪怨』以外のオリジナル作品として恐怖描写に冴えを見せた『輪廻』を。他にも『インプリント~ぼっけぇ、きょうてい』『奇妙なサーカス』『渋谷怪談 THE リアル都市伝説』『MEATBALL MACHINE-ミートボールマシン』『コワイ女~鋼』『水霊』には、それぞれ独自の魅力を感じた。『パプリカ』は、まさに今敏の集大成的作品で、時空を自在に操る編集の妙と高密度なイメージの奔流に圧倒。『時をかける少女』は、オリジナルをリスペクトした上でのウェルメイドな改変が心地よい佳作。


◎2006年劇場公開部門 その2(一般作)

・ヒストリー・オブ・バイレンス

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・ミュンヘン

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 どっちも自分的にはジャンル映画として捉えてるんだけど、スペースの関係ってことで気にしない気にしない(笑)。『ヒストリー・オブ・バイオレンス』は、瞬間的でリアルなバイオレンス描写とところどころに塗された黒い笑いが、久々にクローネンバーグ好きにも大満足。スピルバーグが初めて真正面から政治的な題材に挑んだと公言している『ミュンヘン』も、暴力の無限連鎖を描く語り口はやっぱりエンターテイメント系で一安心。

・あるいは裏切りという名の犬

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・メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬

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 “漢”の映画二題。『あるいは裏切りという名の犬』は、単純な善悪ではなくあくまで程度の差に過ぎない2人の刑事のキャラクター描写と、それを演じきった2人の俳優の好演で最近ではあまり例のないフレンチ・ノワールの快作となっている。『ガルシアの首』を想起させる『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』も、旅の結末には漢泣き必至!

・クラッシュ

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・サラバンド

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・弓

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 『クラッシュ』は大好きだけど、アカデミーは絶対取れないだろうな…と思ってたら取っちゃったんで逆に拍子抜けしたというのはあったし、アルトマンの群像劇に比べるといかにも頭で考えて作ってます感がふんぷんとしてるのはどうかとも思う。だけどそれだけに作劇と構成の妙は堪能できたし、絶望的な状況の中で作者が寄せる希望の欠片には素直に共感できた。実は恥ずかしながら、ベルイマンをスクリーンで観るのは初体験だったよ>『サラバンド』。絶対寝ると思ってたのに、見るものを最後まで画面にひきつけずにはおかない濃密なドラマに脱帽。兎に角ギドクには、監督廃業宣言を早々に撤回してもらいたい(…って、もうすぐ日本でやる特集上映にあわせて来日するらしいので、実はあまり心配はしてないが)。勿論『うつせみ』と入れ替えても無問題。

・雪に願うこと

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・紙屋悦子の青春

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・ダメジン

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 『雪に願うこと』と『紙屋悦子の青春』は、ベテラン監督がそれぞれの持ち味をいかんなく発揮した秀作。『紙屋悦子の青春』自らの気持ちを告げることすら許されない戦時下での心情を、抑制した演技で演じきった原田知世も勿論最高です!公開順では3本目になったが、撮影順では三木聡の監督デビュー作となる『ダメジン』は、既にデビュー時からその演出スタイルを確立していたことが判る。面白過ぎ!


◎2006年劇場未公開ソフト初リリース部門

・スパニッシュ・ホラー・プロジェクト~ベビー・ルーム(他)

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 現段階で見たのはシリーズ6本中4本だが、アベレージはかなり高め。中でもアレックス・デ・イグレシアスが初めて本格ホラーに挑んだ『ベビー・ルーム』は、ムーディーな異次元怪談として極上の仕上がり。小道具の使い方や映像表現も巧みだ。因みに“マスター・オブ・ホラー”は、13本中3本しか観れてないので今回は評価を見送った。

・エル・ゾンビ コンプリートDVD-BOX

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 ゴア描写と怪奇趣味を両立させた、エル・ゾンビシリーズ待望のソフト化!2作品&特典ディスクが初リリースで、残り2作品も初のDVD化。1・2作目は長尺のスペイン語版と英語版が選択でき、映像も70年代っぽさを残しながらもビデオとは比べ物にならない綺麗さと仕様的にも充実。正価2万円超の商品だが、コストパフォーマンス的には決して高くない。

・悪魔のセックス・ブッチャー(+アンディ・ミリガンのガストリーワンズ)

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 『サイコ』と『悪魔のいけにえ』を繋ぐミッシング・リンクを、字幕つきで見れ日が来るとは思わなかった。画質ははっきりいって最低だけど、米本国でもDVD化されてないタイトルだからまぁしょうがないやね。ウィリアム・ガドラーの臆面のないヒッチコキアンぶりと、パット・パターソンのゴアメイクに和め!

・2001人の狂宴

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 振り返ってみると、普通の(…って何?)未公開SF・ホラーの新作は、あまり本数を見てなかった。ルイス唯一の傑作をリメイクした本作も、まぁ傑作とか、これは事件とかいうレベルじゃなくて、普通に面白いゴア・ムービーって感じ止まりなんだけどね。

・キング・スネーク -殺人大蛇-

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 パニック系未公開作は、わりと小まめに追っかけていたんだけど、今年はほとんどこれといった作品はなかっような。『アナコンダ2』をパクッタこれも、どうってことのない一本だけど(爆)、先日ニンゲン失格な怪奇蛇男という有難い称号を頂戴したので、一応蛇ものを入れてみたと、まぁそんな感じ(苦笑)。『コモド vs キングコブラ』よりは、こっちの方が見れたと思うし。


◎2006年旧作初DVD化

・ザ・フリークメーカー

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 なんで『悪魔の植物人間』じゃいけないんだよ>タイトル。でも名前は変わっても、作品の怪しい魅力は変わらず。コメンタリー、ドキュメント、テレビ放映時吹替え音声と特典も充実。

・地獄へつゞく部屋

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 モノクロ映画の着色版リリースだが、丁寧な着色よりが予想以上に怪奇ムードを盛り上げている。ただ欲を言えば、高くなってもいいからモノクロ・オリジナル版も同時収録して欲しかった。

・映画はおそろしい <アントニオ・マルゲリーティ篇>

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 昨年の第1弾BOXび比べると、割高感をより強く感じるというのは正直否定できないんだけどね(苦笑)。でも『幽霊屋敷の蛇淫』はビデオすら出ていなかったので、やはり快挙。

・パトリック

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 本編映像にゴブリン版サントラが流れる、イタリア公開版再現映像が楽しい。

・ミミズ・バーガー

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 祝!1000枚売り切り!


◎2006年2005年映画祭&特別上映部門

・シエラデコブレの幽霊@地下上映

 幻のホラー番組のパイロット版を、プライベート上映だがしっかり16ミリ全長版で見せていただきました。マーティン・ランドー扮する建築家で幽霊物件鑑定士が、わけあり物件の謎に取り組んでいく展開は、元祖“コルチャック”的な面白さながらしっかり怖かったぞ!現在フィルムの所有者様は、これをちゃんとしたソフトにすべく画策中。気になる方は、「『シエラデコブレの幽霊』が見たい!見たい!」とあちこちでふれ回れば、実際に見れる機会が近づくかも…だぜ(笑)。

・家族の誕生@TIFF
・シルク@TIFF
・ロケット@TIFF

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 『家族の肖像』は、タイトル通り家族を巡る三つの別個のエピソードがよく練られており、さらに最後に全ての関連が見えてくる構成が鮮やか。『シルク』は未だ荒削りな部分も散見されたが、心霊ホラーとアクションの融合が面白い。『ロケット』は骨太なドラマと、実際の記録映像を交えつつ表現した時代性が出色。

・見知らぬ他人@ニュージーランド映画祭2006

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 サム・ニール扮するストーカー・サスペンスかと思いきや、ちょっと『うつせみ』風な結末まで先の読めない男女の物語に釘付け。

 最後に、1年前にアップするつもりで準備をしながら、やっぱり途中でほおっておいた、2005年のFavorite Moviesもタイトルだけあげておきます。


◎2005年劇場公開部門 その1(ジャンル系)

・キング・コング

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・ランド・オブ・ザ・デッド

32

・チャーリーとチョコレート工場

33

・蝋人形の館

34

・バタフライ・エフェクト

35

・地球を守れ

36

・マカロニウェスタン 800発の銃弾

37

・緑玉天使

38

・魁!!クロマティ高校

39

・ブース

40


◎2005年劇場公開部門 その2(一般作)

・エターナル・サンシャイン

41

・ロード・オブ・ウォー

42

・エリザベスタウン

43

・サマリア

44

・復讐者に憐れみを

45

・ブレイキング・ニュース

46

・ネヴァーランド

47

・ライフ・イズ・ミラクル

48

・サヨナラCOLOR

49

・青空のゆくえ

50


◎2005年劇場未公開ソフト初リリース部門

・ウィラード

51

・地球最後の男(+人類SOS!)

52

・メサイア・オブ・デッド(+ザ・ゾンビ 黒騎士のえじき)

53

・悪魔のいけにえ ドキュメンタリーパック「ファミリー・ポートレイト」&「ショッキング・トゥルース」

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・ハリウッド人肉通り

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◎2005年旧作初DVD化

・映画はおそろしい ホラー映画ベスト・オブ・ベスト DVD-BOX

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・トゥインクル・トゥインクル・キラー・カーン

57

・赤い影

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・恐怖の足跡

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・残酷の沼

60


◎2005年映画祭&特別上映部門

・ドジョウも魚である@TIFF
・三人組@TIFF
・落第@TIFF

Cc

・レデントール@ブラジル映画祭

Dd

・あの夏の日の浪声@アジア海洋映画祭イン幕張

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July 10, 2006

『ミミズバーガー』&『真夏のホラーTVガイド!』補足

 "気になるDVD&『ミミズバーガ』再臨!”で紹介した『ミミズバーガー』ですが、元記事に記したblogの方ではなくて元サイト“DEATH VIDEO 2000”にて好評発売中です(修正済み)。いや、マジで注文殺到でファイブスさんは嬉しい悲鳴をあげているようなので、欲しい方は早目にこちらから注文するのが吉のようです。再プレスは、きっとあり得ないと思いますから(…つうか、再プレスするなら次なる『アストロ・ゾンビ』を進めてください♪)。因みに僕の書いた文章が初めて活字化されたものは、お手伝いゴーストで書いた某ホラー映画文庫本の『ミミズバーガー』紹介だったというのはここだけの内緒だ(笑)。

 同じく先のエントリーで紹介した“真夏のホラーTVガイド!”ですが、現在好評オンエア中です。放映予定はこちらをご参照ください。僕は先週金曜のオンエアで見ましたが、あんだけ自分は噛みまくってたのに、多少噛んでるけどまぁそれも愛嬌のうち…と笑ってみれる形に纏められてたのは、編集の魔術というかスタッフの皆さんの技術はすごいなぁ。25分というコンパクトな時間ながら、一家言持つ濃い目のコメンテーター連の発言を巧みにまとめてホラー・ファンには飽きさせない内容になっていると思いますますので、機会があれば是非チェックしてみてください。上記『ミミズバーガー』の本編映像もちょこっと流れますよ♪

 とこれまでの補足事項でお茶を濁してみる>更新(爆!)。いや、公開がはじまってしまった作品も含め、夏のホラー作品レビューは今週からこそアップしたいと思ってますので(汗)。

 …つうか、噂には聞いていたけど、マジでこの時間のココログアクセス重すぎなのを思いっきり痛感。ちょっとSID過ぎるんでないかい。

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June 29, 2006

第9回&第10回アルジェント研究会

 この週末(7月2日)には、赤い魔女さん主催による第11回アルジェント研究会『オペラ座/血の喝采』が開催される(お申し込みはこちらから♪)というのに、なんつうかこちらの更新が滞っている間に開催された2回分のレポが未掲載でしたね。勿論、気づいてはいましたが(苦笑)。

 流石にそれぞれ4ヶ月、2ヶ月以上が経過してしまったので、具体的な記憶はすっかり忘却の彼方に消え去ってたりするのですが(そうでなくても「あ」のネタだし!)、簡単にそれぞれの様子をまとめておきます。

◎第9回アルジェント研究会 『スリープレス』&クラウディオ・シモネッティの映画音楽Part3

2006年2月4日(土)am10:30~@カメリアプラザ5階第2研修室

 メインのお題は、「あ」の劇場用監督第15作になる『スリープレス』。これまた「あ」の中でも微妙な立ち位置の作品ながら、当日は前回と同じく19名の参加者が出席。画像は作品のカラーに合わせた青いポロシャツ姿で登壇した赤い魔女さん。

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 こちらは会場に展示されたオリジナル版ポスター…なんだけど、光っちゃってますね。実はこの日、デジカメのバッテリーがほとんど無かったことに直前まで気づかず、撮り直しできなかったのよ。すまん。

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 資料性の高さに加え、本文部分のレイアウトもより見易くなった作品資料の表紙。

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 さて『スリープレス』は、赤い魔女さん曰く新しい分野を求めて迷走していた(つうか、彼の作品の迷走ブリはデビュー当時から現在まで一貫してるような気がするんですが-爆!-)「あ」が、崖っぷち状況の中で原点回帰を果たそうとした作品にあたるそうだ。

 作品解題は、そうした当時の状況を詳細に明かしつつ、ジャーロへの回帰に至った経過と、脚本協力した作家カルロ・ロッセリとのコラボの話題等からスタート。同じくロッセリ原作の『オールモースト・ブルー』の映像等も紹介しつつ、それぞれの役割・関係を語る赤い魔女さんの解説は興味深くかつ判り易いものだったけど、ベテラン監督「あ」と中堅作家ロッセリの関係を、黒澤明と若手作家に例えるのは、反「あ」じゃなくともいかがなものかと思うんでないかい(笑)。

 なお赤い魔女さんは、実際『スリープレス』の撮影現場を取材で訪れているので、製作秘話の一貫としてご自身が取材した時の撮影現場でのインタビューテープや、撮影現場の写真やその時のエピソードなどファンにとっては実に興味深い諸々の事項も併せて公開。殺人の起きる直前の現場で、そこには登場しない筈のロベルト・ジヘッティの姿を見かけ、カマをかけたところ毛布に包まっている殺人者をその時点では明かされていないジヘッティ本人が演じていたことも判ってしまったそうだ。

 なおゲスト・パネラーのT.Yasuiさんは、モレッティ捜査官を演じたマックス・フォン・シドーの関連作品等を中心に紹介。赤い魔女さんの作品解題同様に、こちらもノリノリで時間を超過し、結局前々回の積み残しクラウディオ・シモネッティの映画音楽Part3は今回も完結を見ぬまま第10回へと持ち越されたのであった。

◎第10回アルジェント研究会 『歓びの毒牙』&クラウディオ・シモネッティの映画音楽Part4

2006年7月2日(日)am10:30~@カメリアプラザ5階第2研修室

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 いよいよ研究会も10回を数え、記念すべきメイン作品は「あ」の映画監督デビュー作『歓びの毒牙』。こうして続けてアップすると、前回と同じ服だったのが確認できますね(爆!)>赤い魔女さん。やっぱりジャーロ系は“Almost Blue”ってことでしょうか?まぁ、僕自身の着たきり雀ブリ(つうか所持する服の枚数の少なさ)は、赤い魔女さんよりも段違いにSIDいとは勿論自覚してますとも(苦笑)。

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 当日の参加者は、前回比125%増になる25名が出席する盛況ぶり。

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 会場に展示されたオリジナル版ポスター

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 作品資料の表紙。いきなりネタバレスティールを持ってきてます。まぁ、この会の参加者で作品を見てない方はいないだろうけどね(苦笑)。

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 赤い魔女さんによる作品解題は、今回も映像資料を多用しつつ作品の成立から製作、各場面の意図、スタッフ・キャスト、そして完成後の評判とその後の展開についてまで、実に多岐にわたるものだった。その中でも、個人的に一番興味深かったのは本作にクレジットされてはいないが、作品に関与していた二人の人物の存在についてだ。

 その一人は、SF・ミステリー作家のフレドリック・ブラウン。ベルナルド・ベルトリッチからブラウンの『通り魔』を紹介された「あ」は、当初それをデビュー作として脚本化・映画化しようとしたらしい。ところが幸か不幸か、『通り魔』の版権料が新人のデビュー作としてはとても手を出せる額ではなかったため正式に版権を獲得することを断念。でもそのアイデアを流用して、新たな物語をでっち上げるのはOK!だよねというイタリア的発想から「あ」によって書かれた脚本が『歓びの毒牙』になったのだそうだ。実際、『歓び~』にブラウンがクレジットされてたら、僕的には絶対にブラウンに対する冒涜だろうと暴れただろうな(いや、『通り魔』は読んでないんだけどね)。なお『通り魔』は、1958年にガード・オズワルド監督により小説原題でもある『The Screaming Mimi』のタイトルで映画化されており、その一部が参考上映として流された。モノクロ映像も中々ムーディで、これは全編通して見てみたいものである。

 もう一人は、後に『暴行列車』等のジャーロ作品も監督することになるアルド・ラド。書きあがった脚本の推敲に参加し、助監督として積んだ現場経験から現実の撮影面での実現性等の助言を行ったのはラドだったそうだ。こんなところでも、ジャーロの人脈は繋がっていたんだね。

 またゲスト・パネラーのT.Yasuiさんは、音楽を担当したエンリオ・モリコーネを、関連作品のクリップを流しつつ紹介。今回は全体的に時間配分も順調で、4回までひっぱった赤い魔女さんのクラウディオ・シモネッティの映画音楽も無事完結を迎えたのだった。


参考リンク:第8回アルジェント研究会『わたしは目撃者』(第1回~7回のレポへのリンクあり)

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June 28, 2006

“真夏のホラーTVガイド!”7月にオンエア!

 スカパー318chにてオンエア中のホラー専門チャンネル ホラーTVでは、7月に新たなホラー情報番組が登場します。タイトルは“真夏のホラーTVガイド”。現在同局でオンエア中の情報番組“THE FUNKY HORROR SHOW 2”が黒ビキニ姿のホラーギャルズがキャピキャピと進めるなどホラー初心者向けライト・ヴァラエティ形式を取っているのに対し、こちらはもう少しマニアックな層に向けたものを目指しています。

 25分の番組は3人のコメンテイターが、MCの伊藤さとりさんのナビゲートにより、8月のホラーTV放映ラインナップの中から注目の作品、夏公開の新作映画、新作DVDについて語るという形式。コメンテイターの顔ぶれは、渋谷怪談 THE リアル都市伝説等の福谷修監督、映画文筆家の鷲巣義明氏、そして私、殿井が末席で参加させていただきました。この他、劇場公開新作の1本としてとりあげられた神の左手 悪魔の右手の原作者、楳図かずお先生もゲストとして登場。相変わらずハイテンションなノリは、生で見るとますます感動ものでしたよ(…とほとんど傍観者モード-苦笑-)。

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収録風景:左から収録が行われた六本木 ホラーバー 『トリック・オア・トリート』の館長D.ZOMBIE氏、伊藤さとりさん、楳図かずお先生、鷲巣義明氏、福谷修監督、殿井

 個人的な話をすれば、こういった番組の収録に参加するのは初体験だったので、噛みまくり、つまりまくりと見事なまでにぱんぴーぶりを露呈してます(苦笑)。でも、ご覧の通りのディープな顔ぶれが揃ってますので、番組としてはホラー・ファンなら楽しめるものになっているのではないかと。初オンエアは7月2日の20時30分からで、以後7月中はほぼ1日おきに1度ペースでリピート放送があります。スカパー!の視聴環境がある方は、この機会に是非とも加入して見てください。

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 因みに私の選んだ8月のお薦めオンエア4作品は

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 『怪奇!真夏の夜の夢』

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 『怪人!ドクター・ファイブス』

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 『死霊懐胎』

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 『プリズン』

の4本。なんか真っ当過ぎない?との声も身内から上がりましたが(笑)、私がホラーTVに求めているものは

1.日本での劇場公開、TV放映後ソフト化されていない作品
2.日本での劇場公開、TV放映後一度はビデオ等発売されながら、既に廃盤か現在に至るもDVD化されてない作品
3.完全に本邦未公開作品

等、ここだけでしか見れない(or 見るのが大変な)作品を1本でも多くということに尽きるんですよね。勿論、100%その線でなどと無理を言う気はないわけで、月に1・2本でも1.範疇のタイトルが入っていればホラー好きなら率先して視聴契約を結ぶ気になると思うのですよ(少なくとも自分はそう)。

 正直昨秋の開局当初は、上記3点で言えばかなり物足りない思いをしたのは事実だけど、年が明けて2月以降はコンスタントにそうしたタイトルが入ってきており、貴重な作品に出会う場としてはかなり充実度が上がってきてると思うんですよ。一例をあげると

2月
『怪奇!呪いの生体実験』(英国製マッドサイエンティスト・ホラーの傑作)
『ザ・パック 怒りの群れ』(ロバート・クローズが監督した70年代アニマルパニック)
3月
『恐怖の蝋人形』(ショック場面の直前に警告音が流れるが、実はショック度は大した事ない猟奇殺人もの)
『ギロチンの二人』(ヘンリー・スレッサー原作の怪奇サスペンス)
4月
『新ドラキュラ 悪魔の儀式』(ハマー・ドラキュラ第8作)
『ドラゴンvs7人の吸血鬼』(ハマー・ドラキュラ第9作)
5月
『怪奇!超自然の目』(オカルト探偵ものテレフィーチャー)

は全て日本ではDVDはおろかビデオにもならなかった作品ばかり。勿論中には迷作も混じってはいるけれど(笑)、そんなのも含めて一般的には精々大昔にテレビの洋画劇場で見たような記憶があるかも…レベルの作品が、こうして字幕版でオンエアされたのは快挙と言うしかないよね。今後も、まだまだ隠し球を持っているようなので、ホラーマニアなら今後もますますその動向から目が離せない筈!

 つうことで私の8月のお薦め作品は『プリズン』を除けば全て2.に属する作品なので、屑ビデオを蒐集してる方or近所にこれらの廃盤ヴィデオを未だに置いてあるレンタル屋さんがある方以外なら、なかなか貴重な放映と言えるでしょう。まぁ、画像でお判りの通り僕自身は全て手元にあったりするんですがね(笑)。“FANKY~”よりもよりコアな…という点では、4本中多分一番マイナーな『死霊懐胎』あたりをフィーチャーすべきだったかなぁと、ちと反省したりもしてますが、そのあたりは次回があれば活かしていきたいと思います。

 それと7月からの新番組では、米国製ホラー・オムニバス・シリーズナイト・ビジョンは、ジョー・ダンテ、トビー・フーパーらが監督したエピソードも含まれているので、個人的には楽しみかも。

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June 17, 2006

気になるDVD&『ミミズバーガ』再臨!

 今年も間もなく半年が過ぎようとしている。このままじゃいけない!…ってことで、何事もなかったように復活しよう。いや、実際書かなかったのは何事があったわけじゃなくて、単に自分の不明故なんだけどね(苦笑)。

 実はお気に入り&注目DVD情報は比較的コマメに追加してたんですが、やっぱりエントリーの方もアップしないと利用してくださる方は激減しますな。まぁ自業自得なんでこれまではこれまでとして(苦笑)、まずはこれからの注目DVD情報からどぞ!

 邦画は夏らしくJ-ホラーラッシュの注目作が目白押し。バッド・エンディングも含めて充実度の高かった清水崇の輪廻 プレミアム・エディションとシリーズ最恐を謳った福谷修渋谷怪談 THEリアル都市伝説 デラックス版(作品に関しては近々あらためてアップ予定)がそれぞれ7月14日に、『ランド~』の世界観を先取りしていた東京ゾンビ プレミアム・オブ・ザ・デッド (限定生産)が7月28日に、現時点では未見だがTVシリーズ版完結篇ということで有終の美をどう落とすか興味津々な怪談新耳袋 最終夜 DVD-BOXが7月5日にリリース。

 この他伝聞ではノリ的にはオリジナル版より『マグニチュード 明日への架け橋』に近いよ…とか聞かされ目っ茶不安なリメイク版日本沈没の公開と連動する形で、廉価版再発売となる日本沈没 TELEVISION SERIES プレミアム・ハザードBOXが7月5日に、大映特撮陣が東京を襲う猛暴風に挑んだ風速七十五米が6月23日にそれぞれリリース。後者は予告編しか見たことないけど、銀座を襲う洪水&暴風の描写はかなりの迫力だったのでかなり期待値大ですな。

 洋画の方も新旧&玉石取り混ぜてファンタ系はかなり充実。ジェネオンからは『サウス・パーク』チームによるタイトル通りのブラック・ファンタが特典付でのリリースとなるカンニバル!ザ・ミュージカル SPECIAL EDITIONが6月2日にリリース済み。『キル・ビル』の多数ある元ネタの1本として有名なクリスティナ・リンドバーグ主演の18禁アクション(まぁ、輸入盤と違ってボカシ入りまくりだろうけどね)ゼイ・コール・ハー・ワン・アイ ~血まみれの天使が6月23日に、H・G・ルイスのリメイクにしては、案外普通にすっきり楽しめる今風スラッシャーに仕上がった(コアなファンにはそこが不満かも!?)2001人の狂宴が7月7日にそれぞれリリース。

 2in1路線のトラマンは5月既発売のアンディ・ミリガンのガストリーワンズ/悪魔のセックス・ブッチャーの後者に続き、6月30日にはアサイラム・オブ・サタン/暴行魔ゴリラーの前者と二ヶ月連続でウィリアム・ガドラー初期2作品連続リリース祭りという狂いっぷり(褒めてます)。ブラック・エクスプロテーションを経る前のこの2作は、それ以降の物真似職人芸に比べるとかなり素人くさいのは事実だけど、オカルト趣味やヒッチコキアンぶりなどガドラーがもともと持っていた資質はよりよくでている。字幕がつけば、そのへんも輸入盤で見たときよりより深く感じられるんじゃないかなぁと、英語が不自由な自分としては思ってますよ。因みに7月28日リリースはトラッシュSFホラーの二本立てとなるフレッシュイーターズ 人喰いモンスターの島/クリーピング・テラーとのこと。個人的にはどっちも予告編しかみたことないので、興味津々。

 デックス・エンターテイメントからは、地獄へつゞく部屋』『恐怖の足跡』『リトル・ショップ・オブ・ホラーズという50's&60'sのモノクロ・カルト・ホラーのカラー着色版3タイトルが7月7日に同時リリース。この中ではウィリアム・マローンが『TATARI』としてリメイクしたウィリアム・キャッスルの地獄へつゞく部屋は、パッケージソフトとしては本邦初のリリースとなる。ここしばらくでは、輸入盤を除くと今は亡きディレクTVSFチャンネルのオンエア以外では見ることのできなかった作品なので、ホラーファンでも『TATARI』は見てても、このオリジナル版は未見という方はかなり多いのではないのだろうか。作品自体は亡霊バリバリ大暴れのリメイク版と異なり、実は怪奇ミステリーといった趣向の作品なのだが、ユーモラスさと怪奇趣味が一体となった独特のムードと、ヴィンセント・プライスの怪しくも貫禄のある演技はホラー・ファンなら必見。着色の効果に関しては現物を見てないので現時点ではなんとも言えないのだが、作品的にmust!な一本であることは間違いない。なおこの3本に、既発売の『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』着色版を加えたお買い得パックマスターピース・オブ・ホラー BOXも同時リリースとのこと。

 文化事業?として地道にホラーを出し続けている紀伊國屋書店=イマジカは、それをより特化させた位置づけみたいな感じでHORROR TVとの連動による「HORROR TV」DVDを始動。6月24日リリースとなるピエロ・エイリアンの必殺アサシン殺方も爆笑な50年台SFパロディキラー・クラウンを皮切りに、7月29日には冒頭の自殺場面連鎖がとっても美味しい70年代ジャーロ炎のいけにえと、第2のヒッチコック(達の中の一人)として注目されたリチャード・フランクリンの初期サイキックホラーパトリックがそれぞれリリース。ランタイムを見ると『パトリック』はかつて出ていた日本版ビデオよりも長い模様。「HORROR TV」DVD以外では、かつてフィルムセンターで『時代を通じての妖術』のタイトルで上映されたこともあるセミドキュメント風サイレント・ホラー魔女が7月29日に、そして昨年マニアのド肝を抜いた“映画はおそろしい”DVD-BOXの第2弾が6月24日にリリース決定!第2弾のタイトルは、じゃ~ん!映画はおそろしい <アントニオ・マルゲリーティ篇> DVD-BOXだ!…ってアンソニー・ドーソンかよ(爆)と思ったそこの貴方、早合点はよくないある。今回の収録作は、多少廉いところはあってもゴシック趣味溢れる呪館ホラー、『顔のない殺人鬼』『幽霊屋敷の蛇淫』の二本組なのだ。前者にはクリストファー・リーが、後者には妖花バーバラ・スティールが出ており、サディスティックな道具立てもそれぞれ効果的。前者はかつて『バック・トゥ・ザ・キラー』なるふざけた邦題でビデオ化されたこともあるが、今時まずは現物にはお目にかかれぬレアタイトル。後者はやはりSFチャンネルで放映されたくらいで、本邦初のパッケージソフト化である。怪奇を愛する者ならば、これまた避けては通れないタイトルなのだ。

 この他8月25日にユニバーサル・ピクチャーズからリリースされる“1500円!! 初DVD化/初廉価化&MORE!!”シリーズは、ジョン・ヒューズ作品を中心にコメディ路線がメインでここで扱うべきものはほとんどないのだが(あっ、でもときめきサイエンスは欲しいなぁ)、そんなラインに妖精たちの森なんて弾が紛れ込んでたりするので油断ならない。これはヘンリー・ジェームズの『ネジの回転』(映画版は『回転』他)の事件は何故起こったかを明らかにするエピソード1的作品で、無邪気な子供の恐怖を描いた作品としては忘れ難い一本。廉価版はamazonでも10%オフだったりするんだけど、この手のマニアックタイトルは、気をつけていないとあっという間に店頭から消えがちなので、マメに販売店をのぞけない方は、精神衛生上のことを考えれば早目にネットで予約しちゃった方がいいのかも。なおユニバーサルは、『ザ・カー』『ジェット・ローラー・コースター』『キャンディマン(特典付)』もいきなり廉価版発売するとの噂もあるので、今後の動向が要注目だね。

 それと自分がテキストまわりを手伝ったものとして、80年代スプラッターの代表作『マニアック』と、もう一つの『フリークス』こと『悪魔の植物人間』のリリースが9月になった模様。これもまた詳細判りましたら、あらためて報告します。

 さてここからは、趣向を変えてインディーズ・レーベルの話題をしよう。貴方は『ミミズ・バーガー』を知って(or覚えて)いるか!かつて80年代中期に吹き荒れたビデオ・バブルの嵐の中で、MiMiビデオというごく一部では異常なほどに支持された(その全貌はこちらを)レーベルから出ていた未公開映画で、内容は…タイトルまんまですな(笑)。ミミズを愛する男がいて、彼にとって邪魔な人間にミミズを食わせると、なんと食った人間は下半身ミミズのミミズ人間に変身!と相成るわけだが、そんなお話は兎も角としてひたすらモノホンのミミズをネチャネチャと食する場面が能天気な音楽にのせて映し出されるわけだよ。口に入れたものを人に見せてはいけないという最低限のエチケットさえ、毛頭は持ち合わせてないという事実を鋭く抉った大問題作。監督・主演を兼任し自らミミズを食いまくってるのはハーブ・ロビンズ。そしてロビンズの企画の映画化を買って出たのは、『アストロ・ゾンビーズ』や本作と同時にMiMiビデオからリリースされた『人間ミンチ』『シー・デビル』等の監督としても知られるテッド・V・マイケルズ。そしてこのテッドのことを「ルイス・ブニュエルよりシュールで、オーソン・ウェルズより計算高く、ラス・メイヤーよりインモラル」と称する熱狂的なファンが日本にもいたのだ。彼の熱意は個人でテッドと交渉し、権利を獲得し、ついにインディーズ・レーベルを立ち上げるとその第1弾として、日本版『ミミズ・バーガー』のDVDが完成してしまったのだ。

 その奇特なファンとは、日本でも有数の屑ビデオサイトとして知られるDEATH VIDEO 2000を主催するファイブス氏。かなり前から出すという話を聞いてはいたのだが、昨晩氏の卒業制作作品(いや、今見てかっこいいよ!)を含む上映会で会う機会があった時に、一昨日プレス先から搬入されたばかりという現物を手渡された。マジで作っちゃったよ>この男。いや、勿論出すといっていた以上、絶対出すとは思っていたけど現物を見ると感無量だぁ。つうことで商品画像紹介!

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 日本版ジャケット(表)

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 日本版ジャケット(裏)

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 封入特典:フォトアルバム(表紙とも12頁)

 ジャケ回り及びブックレットデザインは、エクスプロテイション・ムービーサイトLMD主催の中村氏。この画像じゃわかりづらいかと思いますがジャケ裏にもうっすら浮かび上がってるアムガーがナイス!なおフォト・アルバムには「私はミミズが嫌いです」と明言する(よかった、同じだよ-笑)テッドのメッセージも収録されてます。しかしなんといっても驚きはこれ!

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 封入特典:直筆サイン&手の油つきカード(激爆!)

 画像右上部のサインですが、これ印刷じゃありません。ファイブス氏がアメリカに送ったカード1000枚に、プロデューサーのテッド本人が直筆サインをしたものなのだよ。いやそりゃテッドがメジャーだって主張する気はさらさらないけど、それでも普通に考えたら極東からのこうした依頼に二つ返事にOK!はしないだろうて。このあたりは、間違いなくファイブス氏の熱意の賜物なんだろうね。なお、これが『ミミズバーガー』なのか!ってくらいセンスのいいこのカードは、映画秘宝等でもイラストを描かれているオーグロ慎太郎によるもの。

 映像の方は、テッドのオリジナル・ポスター等をシャッフルさせるレーベル・オープニング・タイトルが目茶カッコいいぞ。そうそうファイブス氏は、これ1本だけではなく、今後も継続してテッド作品のリリースを計画中なのだ。レーベル・タイトルは“it's Alive!!”そう、『フランケンシュタイン』の有名な台詞であり『悪魔の赤ちゃん』シリーズの原題ですな。語彙通りにシブトク頑張って欲しいものです。

 本編画像は、ジャケにご本人も書いているように、正直ビデオ並。でも、普通のメーカーであっても、案外このレベルで商品化しているところも少なくないし、なんといっても今時このビデオをレンタルしてるショップや、持ってる輩ってほとんどいないだろう(…なんて書くと、俺は持ってるコメントが身内から山のようによせられそうですが、それは勿論判ってるんで却下します。あくまで一般論なんだからね)から、新たに流通するってことは重要だよね。現物に触れる機会が無かった若い世代の方は、このDVDでエリーゼのために=ミミズダンスをインプリンティングされてください。

 映像特典はオリジナル版予告編&MiMi版で現存が確認された『ミミズバーガー』『シーデビル』『テン・バイオレット・ウーマン』の予告編。MiMi版のうち最初の二作はかなり短めだが、『テン~』などはナレーションの寒さが結構すごくて感動。多分このソフト以外では、なかなか見れないという認識で間違いないかと。

 販売形態は、“DEATH VIDEO 2000”内の注文頁からの受付が中心だが、中野のタコシェでも限定店頭取り扱いもあるそうだ。現在好評発売中で、本体価格は¥1500+通販の場合はメール便送料1枚¥180。本当に一人でやってることなので、発送までに少々時間を要するかもしれないがそこはご容赦のほどを。作品の性格を考えると、万人に買え!と薦めることは憚られるかもしれないけれど、ホラーやファンタの愛好家なら、作品的にも、また個人がその情熱でこれだけの形をなしえることができる証左としても手元に置いておいてしかるべきものでしょう。氏との個人的な関係抜きで、そう断言する!なおプレス数は限定1000枚。これが軌道に乗れば、次は『アストロ・ゾンビーズ』のリリースも計画中とか。君も字幕付で見たいだろ!>懐中電灯で自家稼動ゾンビ!!少なくとも俺は見たいぞ!!

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January 01, 2006

謹賀新年だBOWWOW!

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 昨年は年賀状と同じ画像で手抜きしましたが、今年は別っすよ(…と言っても、バンク画像だけどね-苦笑-)。つうことで、今年再びブームの予感!?70年代トラッシュ映画の中から、本当は映画じゃなくてテレフィーチャーな『ドッグ』です。

 昨年は左腕を折るは、虫歯の集中治療に散財するはと見事なくらい大厄を実践してしまったので、今年は絶対にいい年にするですよ。根拠は無いけど(爆!)。

 ということで、皆様のご多幸をお祈り申し上げます。今年もよろしくです。

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December 31, 2005

ニュー・イヤーズ・イヴ…『アサルト13 要塞警察』

 あまり実感はないんだけど、大晦日である。結局、9月に着手した部屋の整理は、完全に物置と化している隣室に移る前に中断。今これを打っている部屋も、一度は片付きかけたにも関わらず、その後増えたソフトや資料で再び床が見えなくなり、大掃除をはじめることも困難みたいな…。結局煩わしくも心地よい、混乱に浸りつつ年を越そうとしている。

 旬刊ペース(…じゃないんだってば-苦笑-)での更新ついでに、“注目のDVD!”欄から既発売でamazonでも定価扱いになったものを外して、3月くらいまでの注目作品をアップしてみた。なんてったって、要チェックは3月にいよいよDVDで復活決定のデッドリー・スポーン…と言うのは、ちょこっと仕事をしたから故のアピールなんだけど、まぁB級SFのマスターピースであることには間違いないので、よろしかったら是非ご購入ください。でもピラニアは、最初からCEで出しとけといいたいぞ>キングビデオ。流石にこれは、買い換えるのは憚られるし・・・。トラマン定番2in1はホラー・ホテル/女子大生悪魔の体験入学が目茶渋いんだけど、『ホラー・ホテル』ってアミカスの『死霊の町』だよね?だったら、邦題は変えて欲しくなかったぞ。新作系ではそれぞれOVとして作られた、シリーズ第3弾、第7・8弾となるドラキュリアIII 鮮血の十字架 』、『ヘルレイザー ワールド・オブ・ペイン』、『ヘルレイザー ヘル・ワールドが、駄目駄目な予感を漂わせながらも、ここまできたらつきあうしかないかな?って感じかな(笑)。

 さて今年の締めは、大晦日を舞台にしたこの新作でいってみよう。

アサルト13 要塞警察(配給:角川ヘラルド・ピクチャーズ

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 ジョン・カーペンターの本格商業デビュー作(『ダーク・スター』も劇場公開されているけど、こちらの製作体制はセミプロ)となった『要塞警察』のリメイク作品。舞台をオリジナルのロスからデトロイトに移し、しかも雪が降り積もる大晦日の一夜の出来事に変更された。白銀に包まれた沈黙世界の佇まいは、オリジナルとはまた別の閉塞感が出ていて印象的。さらに13分署に襲撃をかけるのは、護送中に収容された凶悪犯ビショップ(ローレンス・フィッシュバーン)の引渡しを求める悪徳警官グループだ(そのリーダーを演じているのは、ガブリエル・バーン)。そして確信犯の悪党であるが故に、その目的と行動は一般的な理解の範囲内であり、表情や台詞を排除することで非人間的な存在であるかのように描かれていたカーペンター版のストリート・ギャングのような恐怖感は希薄だ。

 ただそもそもオリジナルのストリート・ギャングは、その後もカペンターが『ハロウィン』のマイケル、『ニューヨーク1997』の囚人たち、『パラダイム』の浮浪者などなどとして描き続ける十八番であって、それをただ単に真似するのでは他人がリメイクする意味などなかったと言えるだろう。不気味さや恐怖を期待すると確かに裏切られるかもしれないが、篭城する警官及び犯罪者の数をオリジナルより増やし、それぞれの疑心・共闘を細かく描くことで篭城する側の関係性で楽しませるサスペンス・アクションになっているのだ。

 そういうわけで、基本線ではオリジナルと切り離して楽しむが吉の本作。篭城する主人公たちの名前も、潜入捜査の失敗で部下を死なせてしまったことがトラウマとなっている主人公の警官がローニック(イーサン・ホーク)、悪徳警官に狙われる凶悪犯がビショップ(ローレンス・フィッシュバーン)と一新されているのだが(警官と凶悪犯の人種は逆転)、それでもプロローグ部分で潜入捜査中のローニックがオリジナルの凶悪犯の名前である“ナポレオン”を名乗ったり、煙草や信頼などオリジナルでも印象的だった台詞を解釈やパターンを変えて用いている。このあたりは、オリジナル・ファンなら思わずニンマリするに違いない。

(2006年12月19日 午後3時半~ 角川ヘラルド・ピクチャーズ試写室にて)

☆2006年2月18日、日比谷みゆき座ほか全国東宝洋画系にてロードショー公開!

<関連作品ギャラリー>

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 オリジナル版『要塞警察』米盤DVDジャケ。日本版DVDは、画質のSIDさで悪名が高い。

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 『アサルト13』のジョン=フランソワ・リシェと同じくフランス人監督フローラン=エミリオ・シリによるもう一つの『要塞警察』フォロワースズメバチ。サイレンサーの使い方等は、こちらの方が原点ぽいかも。

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 警官ストライキ中の町で、ゲイを虐殺する自警団から逃げてきたゲイの男を匿った男女が、アパートに篭城するカナダ製サスペンス『反撃』.


 それでは、よいお年を>ALL。

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